当館について
和泉市久保惣記念美術館は、昭和57年に開館した和泉市立の美術館です。日本と中国の絵画、書、工芸品など東洋古美術を主に約12,000点を所蔵し、所蔵品をいかした年4~5回の企画展と年1回の独自企画の特別展を開催しています。さらに、展覧会以外にも、茶会やコンサート、市民による作品展など、市民の創作活動並びに発表の機会と場を提供し、市の文化振興につとめています。
「久保惣」(久保惣株式会社)は、明治時代からおよそ100年にわたり綿業を営み、泉州有数の企業として大きく発展しました。
初代久保惣太郎氏(1863-1928)が明治19年(1886)に創業し、二代惣太郎氏(1889-1944)、忠清氏(1900-1954)、三代惣太郎氏(1926-1984)と引き継がれ、地元和泉市の発展に大きく寄与しました。昭和52年の廃業を機に三代惣太郎氏が代表して、所縁の地である和泉市の地域文化発展と地元への報恩の意を込め、美術品、および美術館の建物、敷地、基金が和泉市へ寄贈され、昭和57年10月に、寄贈者を顕彰する館名をつけ、久保家旧本宅跡地に開館したのが「和泉市久保惣記念美術館」です。
開館以降、五代目代表者で当館名誉館長久保恒彦氏によって、平成9年には美術館新館が寄贈され、その後も、久保家や久保惣の関係者から、音楽ホール、市民ギャラリー、市民創作教室、研究棟が追贈され、約5,000坪の敷地を有する今の姿に至っています。
活動内容
展覧会
日本、中国を主とした東洋古美術に関わる展覧会を企画、開催しています。本館では下記のように年間5~6回の展覧会を催しています。新館では中国の青銅器・陶磁器・玉器などとモネやルノワール、ロダンなどの西洋近代美術を中心とした展示を行っています。
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特別展(年1回)
当館収蔵品と関わりのあるテーマによる展示を行います。国内の博物館施設や個人の所蔵になる名品もご覧いただけます。
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特別陳列(年1回)
収蔵品の国宝、重要文化財を中心とする名品や、まとまりのあるコレクションを特集して陳列します。
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常設展(年3~4回)
日本、中国の絵画、工芸などの収蔵品を、テーマを設けて展示します。
出版
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展覧会・館蔵品図録
特別展展示作品の図版と作品解説を掲載した展覧会図録や、収蔵品を紹介する館蔵品図録等を発行します。
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紀要
東洋美術等に関する研究論文を収載した刊行物です。当館の学芸員、および国内外の研究者による論文を掲載します。
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研究書
当館所蔵品についての研究成果を発表しています。
生涯学習
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和泉市久保惣市民ホール(Eiホール)
ミュージアムコンサートなどの演奏会を催しています。
音楽ホールの催しはこちら -
和泉市久保惣市民ギャラリー
創作活動の発表の場として、絵画、写真、陶芸などの展示を行っています。
イベント一覧はこちら -
和泉市久保惣市民創作教室
陶芸、絵画、染色などの創作の場を提供しています。
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公開講座
美術品をより身近に鑑賞し、美術館に親しんでいただくために、当館学芸員による美術講座を、日本の絵画、中国の工芸などをテーマにして開講しています。講座生の募集は和泉市の広報誌『広報いずみ』を通して行います。
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その他
館蔵品をインターネットを通して内外に公開するため、収蔵作品のデジタル情報化を進めています。このデータの一部はトップページの「デジタルミュージアム」からご覧いただけます。
デジタルミュージアムはこちら
主な収蔵品
日本の書画
書跡には、平安時代のかなの名品「歌仙歌合」(国宝)、「貫之集下 断簡・石山切」藤原定信筆(重文)をはじめ「熊野懐紙」藤原範光筆(重文)などの古筆、奈良時代以降の経巻と鎌倉時代の墨跡の重要文化財が数点ずつ含まれています。
絵画では、鎌倉時代の「伊勢物語絵巻」「駒競行幸絵巻」、室町時代の「山王霊験記絵巻」(以上3点とも重文)などの絵巻をはじめ、「源氏物語手鑑」土佐光吉筆、「枯木鳴鵙図」宮本武蔵筆(以上2点とも重文)などの作品があります。
浮世絵版画約6,000点は北斎や広重の風景画、歌麿や写楽の人物画、国芳の武者絵など多彩な内容をもちます。
中国の書画
「十王経図巻」(五代~北宋時代)、「鍾馗図」(元時代)の2点の重要文化財があります。
また、平成12年に林宗毅氏より寄贈された近現代絵画411件の定静堂コレクションがあり、中国のこの時代のコレクションとしては国内で有数の内容となっています。
陶磁器
中国・南宋時代の「青磁 鳳凰耳花生 銘万声」(国宝)、日本・桃山時代の「黄瀬戸 立鼓花入 銘旅枕」「唐津 茶碗 銘三宝」(いずれも重文)などがあり、上記の書画、および中国・日本の青銅鏡とならんで第一次久保惣コレクションの精華といえます。
金工品
「響銅 水瓶」(奈良時代)、「響銅 鵲尾形柄香炉」(中国・南北朝時代)などの重要文化財7点を含む、金工品約2,500点を収蔵しています。日本・中国の青銅鏡276点と商(殷)周時代の青銅器は、絵巻とともに当館の代表的な作品群です。
その他の東洋美術
上記のほか、新石器時代から漢時代の玉器、明清時代の煎茶器、古代西アジアの金工品などの工芸品があります。
西洋美術
モネ、ルノワール、ゴッホ、ピカソ、ロダンなど、西洋近代の絵画15点、彫刻2点のほか、16~18世紀にヨーロッパで制作されたアジアを含めた世界の古地図、19~20世紀の西洋のエッチング、リトグラフなどがあります。
蔵書
日本や中国を中心とした東洋の美術とそれに関連する諸地域の歴史、考古学、宗教、文化などに関わる図書資料約67,000冊を所蔵しています。
収蔵作品の内容に応じて収集しており、中国古代史学の権威である貝塚茂樹氏の旧蔵書約35,000冊も含まれます。このなかの中文書籍は、貝塚茂樹記念文庫として蔵書の要を成しています。
コレクション紹介
久保惣コレクション
開館当時に久保家と久保惣から寄贈された東洋古美術約500点の第一次久保惣コレクションに始まり、現在、第六次にまで拡大し、西洋美術、古地図、浮世絵が加わる多彩なコレクションへと広がりをみせています。
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第一次久保惣コレクション
昭和57年の開館当初、久保家と久保惣より寄贈された約500点の東洋古美術で、絵巻、水墨画、古筆、墨跡、陶磁器、金属器、木漆器等の幅広いジャンルに及び、当館の所蔵品の核をなします。中国・南宋時代の「青磁 鳳凰耳花生 銘万声」と平安時代の「歌仙歌合」の国宝2点、重要文化財29点を含みます。
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第二次久保惣コレクション
開館以降、財団法人久保惣記念文化財団と久保惣から寄贈された作品、および久保家から追加寄贈された作品等からなる約2,000点のコレクションです。日本と中国の書画工芸品のほか、モネ「睡蓮」、ロダン「考える人」などの西洋美術も含みます。
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第三次久保惣コレクション(江口治郎コレクション)
実業家・江口治郎氏(1910~1998)の旧蔵品で、久保惣により購入され平成22年(2010)に寄贈された古代中国の玉器や青銅器、瓦当、西アジアの青銅器、明清時代の煎茶器など558点です。
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第四次久保惣コレクション(久保恒彦父子コレクション)
鈴木春信、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重など著名な浮世絵師の作品を中心に、京・大坂の上方絵を含む浮世絵版画約6,000点です。久保恒彦氏の収集品に、ご子息・行央氏、尚平氏の収集品を加え、平成16年(2004)、平成20年(2008)、平成21年(2009)の3カ年にわたり寄贈されました。
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第五次久保惣コレクション
久保恒彦氏とご子息によって収集されたブラウの大型の地図帳や地球儀、天球儀など、17世紀~18世紀を中心とする西洋の古地図と江戸時代の日本の古地図82件(391点)で、平成22年(2010)にトヨタ久保グループから寄贈されました。
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第六次久保惣コレクション
平成19年度~28年度にかけて、久保恒彦氏とトヨタ久保グループからの寄附金で和泉市が購入した美術品、ならびに久保家からの寄贈品をあわせた日本書画、浮世絵版画、西洋の版画など、74件(742点)に及ぶコレクションです。
その他のコレクション
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定静堂コレクション
平成12年(2000)に台湾出身の実業家・林宗毅氏(1923~2006)から寄贈された19~20世紀の呉昌碩、斉白石、豊子愷など約300名の画家たちによる中国近代絵画412件です。
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江川コレクション
実業家・江川淑夫氏から平成13年(2001)に寄贈された帯鉤186点を主とする中国金工品262点および平成28年(2016)に寄贈された日本、中国、東南アジアの金工品や西洋のガラス器などの451点からなるコレクションです。